事務所発信記事

弁護士雑感

【弁護士雑感】捨ててはいけない大事な記録

 一般の方がわれわれ弁護士にご相談に来られるということは、多かれ少なかれ紛争に巻き込まれているということを意味します。

 そして、紛争の解決を模索し、少しでも自己に有利な解決に至るためにとても大切なものが「証拠」です。

 そこで今回はこの「証拠」について、特に「当時は大切なものとは思わなかったが紛争になった今になるととても大切なものだった。代わりになるような証拠も、もう手に入らない。」ということが多いものについて、少しお話をしてみようと思います。

1 預貯金通帳

  みなさんは金融機関の預貯金通帳をどのように保管しておられるでしょうか。

  今現在使用中のものについては大切に保管しているものの、繰り越ししてしまった使用済みのものについてはこれを破棄したりしている方も多いものと思います。

  繰り越し済みの通帳などをシュレッダーにかけるなどして破棄してしまうことは、個人情報保護の観点からは望ましいものといえるのですが、他方後日なにがしかの紛争に巻き込まれた際に大切な武器となりうる証拠を自ら捨てていることと同義である・・かもしれないということは、実はご理解いただけていないのが実情です。

  これは、一般に金融機関においては過去の取引履歴などはおおむね10年間程度分しか保管されておらず、それ以上過去の分については金融機関に取引履歴などを照会しても、もう手に入らないということが意外と周知されていないことによるものです。

  そのため、10年以上前の過去のお金の入出金が大切な事実となるような争いにおいて、十分な立証ができないために、不利な判断を受け、あるいは不利な判断を受けることを避けるために多分に譲歩した和解に応じざるを得ないというケースが散見されるということになります。※1

  使用済みの通帳などを保管しておくことは確かに個人情報保護の観点から一定のリスクがあることは否定はできませんが、そう嵩張るものでもありませんので、当職としてはどこか安全な場所に大切に保管しておかれることを強くお勧めいたします。

2 日記など

  個人の方の日記などの記録については、一般の方の多くは「紛争当事者である自分が書いたものなのだから証拠としての価値などは無い」とお考えのようなのですが、実は一定の要件を充たすものであればそのようなことはないものということができます。

  これは、①紛争になる前に作成したものであれば、紛争で自己に有利になるためという動機がなく、殊更虚偽の内容を記載する理由がない②前後の記載内容などから加筆や修正の可能性が低いものと認められる場合もあるという理由によるものです。

  そのため、個人作成の日記などであっても①紛争になる前に作成されたものであり②毎日ないしそれに近い程度の頻度で書かれており、かつ日ごとの記載が詰まっている(要は後日書き足すスペースなどがない)というものについては、当時の状況を示す比較的信用性の高い証拠としての価値を有するということになります。※2

  他方、小学生の夏休みの宿題のように、後日(特に紛争になってから慌てて思い出して)まとめて作成したような日記は証拠としての価値は低く、むしろ単なる陳述書と同様にみられるものにすぎませんので、証拠としてみた場合過去の日記というものは一度処分してしまうとあとから取り戻すことはできません。

  このような過去の日記の証拠としての価値を考えると、他人に見られて恥ずかしい思いをするかもしれないなどという心配はあるものの、大切にとっておくべきものということができるでしょう。※3

3 相手方との間でやり取りをしたメールなど

  証拠となるものは書面に限りません。

  例えば携帯電話やPCでの電子メールも立派な証拠となりますし、最近であればLINEなどでのやりとりも重要な証拠となり得ます。

  しかし、これらについては一般の方においてはそもそも裁判上の証拠になると思っておられない方も多く、しかも機種変更や使用機種の記憶容量の問題などで比較的気軽に消去してしまわれる方が多いのも実情です。

  ご相談に来られた際に、実際にはこのようなやり取りがなされたのだが、そのLINEのやり取りは既に消してしまっているというようなお話をされることも多く、大変歯がゆい思いをしております。

  電子メールやLINE等のやり取りは、時として復元することも可能な場合もあるのですが、それには相当な労力や費用などがかかることもあり、費用対効果の点からお勧めできなくなることもあります。

  そのため、すべての電子メールやLINEとは言いませんが、少なくとも何か法的な問題が生じ得るような関わりをしている方とのやり取りについては、バックアップをしっかりと取っておかれることを強くお勧めします。

 以上のように、ひとまずぱっと思いつくものをお話しいたしました。

 本当はまだまだ列挙させて頂きたいものがたくさんあるのですが、あまり長くなるのも大変なので、ここでひとまず終わります。

※1 特に、離婚事件などにおいて財産分与の争いとなる場合などは、婚姻当初からの財産の流れを把握する必要があり、10年以上前の預貯金通帳の情報が極めて重要となることが多いです。

※2 自身のブログやFace Bookなどを日記の代わりにしているような方もおられるかと思いますが、後日の加除訂正や修正なども可能なため、証拠としてみた場合その価値は下がるものといえます。

※3 恥ずかしい内容であれば、むしろ「他人に見せることを想定していない(すわなち嘘を書く理由がない)」との理由で信用性は高まるのですが・・。

<弁護士 溝上宏司>