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弁護士雑感

【弁護士雑感】動物愛護法について

 先日、猫を虐待したとして、警視庁は税理士の男性を動物愛護法違反容疑で逮捕したと発表しました。報道によると、自作の罠で捕獲した野良猫をガスバーナーで焼くなどし、その様子をインターネットに投稿していたらしく、その様な残虐な行為に対して、懲役刑を求刑するよう求める約3万7千人分の署名が東京地検に提出されました。

 そこで、今回は動物愛護法について少し書いてみたいと思います。

 動物愛護法(正式名称は「動物の愛護及び管理に関する法律」)という法律自体は何処かで聞いた事があるとは思いますが、実際法律の条文にまで目を通したことがある方というのは殆どおられないのではないかと思います。恥ずかしながら、私も弁護士になり、「野良猫が庭で糞尿をして困っている。駆除しても構わないか。」との御相談を受けるまでは、動物愛護法の条文に全て目を通したことはありませんでした。

 動物愛護法には、以下の様な記述があります。

第四十四条 愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。

2 愛護動物に対し、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、又はその健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束することより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管する愛護動物であって疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であって自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管することその他の虐待を行った者は、百万円以下の罰金に処する。

3 愛護動物を遺棄した者は、百万円以下の罰金に処する。

4 前三項において「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。

一 牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる

二 前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの

 

 上記の税理士は、44条第4項第1号で規定されている「猫」を何匹も殺したため、「愛護動物」をみだりに殺した罪で逮捕されたわけです。 

 この様に、条文上は、「愛護動物」とはどのような動物を指すのかがしっかりと明示されていますが、「あれ、私の知っているあの動物は保護の対象じゃないの?」と疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか。

 例えば私は奈良公園によく子供と遊びに出かけるのですが、そこには至る所に鹿がいます。奈良公園の鹿は、巷に売っている「鹿せんべい」なるものをあげようとすると、律儀に頭を下げてくるので、非常に愛くるしい一面があるのですが、このように自然生態系の中で生きている野生動物の鹿は、動物愛護法44条第4項において、保護の対象となる「愛護動物」にはあたらないということになります(4項1号に規定される動物ではなく、かつ人の占有物でもないため)。

 したがって、基本的に奈良公園の鹿をみだりに殺したり、傷づけたとしても動物愛護法による処罰の対象とはなりません。

 また、動物愛護法44条第4項において保護の対象となる「愛護動物」には魚類や両生類や昆虫が含まれていませんので、庭で鯉や蛙を飼っており、それらの動物をみだりに殺されたというような場合であっても、加害者は動物愛護法による処罰の対象とはならないということになります。

 では、動物愛護法によって保護されていない動物を殺したり傷つけても刑事責任を追及されないのかというと、決してそういうことはありません。奈良公園にいるシカは「天然記念物」の指定を受けていますので、「文化財」として文化財保護法によって保護されており、故意に傷つけたりすれば、「5年以下の懲役または 30万円以下の罰金」という非常に重たい処分を科せられる可能性があります。調べてみると、鹿肉を売ろうと考え、奈良公園の鹿を殺した人が文化財保護法違反の罪によって、起訴され有罪判決を受けています。

 また、如何なる動物であろうと、所有者であれば器物損壊罪(刑法上、人間以外の動物は全て「物」として扱われます)で加害者を告訴することが可能です。

 上記の税理士がどこまで分かっていて、動物愛護法違反の罪を犯したのかは分かりませんが、そもそも、みだりに動物を殺したり、傷つけることが良ないことであることは法律の条文を知らなくても常識的な感覚を有していれば、分かることだと思いますし、その意味では多くの方が単なる罰金刑ではなく、懲役刑を求めているのは至極健全なことのように思います。

 なお、上記の条文を読んで、「遺棄(捨てること)」することも動物愛護法で禁止されていることをお知りになった方もいらっしゃるのではないでしょうか。よく、ワニガメ等の危険な動物を捨てる行為はテレビ等で注意喚起がされていますが、実は、犬や猫であっても遺棄すれば「100万円以下の罰金」が科せられることになりますので、注意が必要です。

 最後に、こんな事をあれこれ書いていると、ふと自宅にいるヤモリと思わしき動物のことが思い出されました。ヤモリは爬虫類でイモリは両生類ですので、ヤモリを駆除する場合、もしそのヤモリが誰かに飼われていた場合には、動物愛護法に触れることになるわけか・・・などと一人考えてしまう自分がいたのですが、私自身、職業病というか、相当病んでいる気がしている今日この頃です。

 ちなみに、ヤモリはゴキブリなどの害虫を食べてくれる益獣らしいので、見つけても放置しておくと良いそうですが、正直私にはイモリとヤモリの区別をつけられるようになる気が全くしません。

                           〈弁護士 松隈貴史〉