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弁護士雑感

【弁護士雑感】仮想通貨について

 「ビットコイン」と呼ばれる仮想通貨が急速に値上がりしたことを受けて、仮想通貨というものに対する一般の方の関心が集まっています。私の周りにも「ビットコインで1000万円儲けた」などと嬉しそうに話す友人がいました。

 ただ一方で本年1月26日、国内2位の仮想通貨取引所である「コインチェック」が外部からのハッキングを受け、約580億円相当の「ネム」と呼ばれる仮想通貨を不正に引き出されたことが発覚し、社会問題となっています。

 そこで、今回は仮想通貨について少し書いてみようと思います。

 そもそも、仮想通貨とは何なのでしょうか。

 昨年4月に資金決済法(資金決済に関する法律)の改正により、「仮想通貨」についての規定が整備され、「仮想通貨」については以下の様に定義されました(資金決済法2条5項)。


  

 この法律において「仮想通貨」とは、次に掲げるものをいう。

一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために 不特定の 者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて 移転することができるもの

二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって 、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの


 正直、この定義ではあまり良く分からないという方が大勢いらっしゃるかと思いますが、要は、本邦通貨や外国通貨以外で、不特定人との取引に、電子処理を用いて決済手段として利用できる財産的価値のあるものと言えるかと思います(電子マネーなどは、使える場所が決まっており、「不特定人との取引」の要件を満たさず、「仮想通貨」には当たらないことになります。)。

 私達が通貨と聞いて真っ先に思い浮かべるのは日本銀行が発行する日本銀行券、造幣局が製造し政府が発行する貨幣(硬貨)だと思うのですが、それらは「法定通貨」と呼ばれ、法律(日本銀行法、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律)により強制通用力が認められています。

 ここに「強制通用力」とは、額面で表示された価値で決済の最終手段とすることが政府・国家から保証されている力のことを言いますので、要するに、法定通貨は、政府が額面上の価値についてお墨付きを与えてくれていることになります。

 一方で、「仮想通貨」の場合はあくまで、日本銀行などの公的な発行主体及び管理者が存在していませんので、強制通用力は認められず、個々人の信用によって成り立っています。言い換えれば、仮想通貨はその信用を失うと、その価値はゼロになり、誰もその価値を保証してくれません。

 もちろん投機目的という視点だけで「仮想通貨」を見た場合には、株式と同様に値上がりして儲かることもあれば、値下がりして損をするというだけの話なので、それらの事情をしっかりと熟知されたうえで購入されることには何ら問題はありません。

 しかし、今流行りの「仮想通貨」というだけで、安易に購入をされることは極めて危険です。

 いつのご時世にも、この様な流行を詐欺の手口に利用する悪い輩は存在しており、ほとんど流通もしていない、誰も聞いたことのない「仮想通貨」について、「今後これは必ず値上がりしますよ」などと甘い言葉で勧誘してくるという手口が増えているようです。

 先日ヤフーニュースでも、「もしビットコインが流通し始めた当初に10万円分のビットコインを買っていれば、今は1兆円以上の資産価値を保有していたことになる」という趣旨の記事が出ており、この様な記事も付け加えられて説明されると、ついつい乗せられてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、基本的に「仮想通貨はいつ無価値になってもおかしくない」という認識は絶えず持っておく必要があります。

 仮想通貨の購入を検討される場合には、仮想通貨取引所が提供している情報をしっかりと確認するとともに、そもそも当該取引所が仮想通貨取引を認められた取引所であるかどうかも最低限しっかりと御確認頂く必要があります。

 

 仮想通貨は、当初個人間で送金でき、海外とのやり取りにおいても基本的に送金手数料が掛からないという利便性から、需要が増してきたと言われています。

 確かに、私としても海外に送金手続きをする場合には、それなりの時間と手数料が掛った記憶がありますので、それが掛からない世界共通の通貨なるものの存在には、ある意味、非常に魅力を感じました。

 しかし、一方で、今後も公的な機関が発行・管理していない通貨が増え続けると、いずれこれまでの金融のメカニズムを破壊してしまうのではないか、ルールを守らない国家にとって、「仮想通貨」は不正な資金獲得のための手段とはならないか、という漠然とした危機意識を持っています。

 世界レベルでの法整備が喫緊の課題と言えるかと思います。

〈弁護士 松隈貴史〉