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弁護士雑感

【弁護士雑感】台風による被害について

 今年は、気温が非常に高く、自然災害による被害が非常に多く発生しました。中でも、台風24号の被害は大きかったようで、台風が通り過ぎた後、台風関連の御相談が、当事務所にも数多く寄せられました。

 そこで今回は台風による災害について、簡単に書いてみようと思います。

 今回、台風24号が過ぎ去った後、自宅の家の木が倒壊し、隣の家の塀を壊してしまった、隣のアパートの看板が外れて、自分の車両が傷つけられた、近所の家の瓦が飛んできて自宅の窓が損壊した、など暴風に関わる御相談を沢山頂きました。

  では、台風による暴風雨で、自分の家の瓦が飛んだり、敷地内にある木が倒壊し、隣家に損害を与えた場合、法律上どのような責任を負うことになるのでしょうか。

 この点、民法は、717条において、次の様に定めています。


717条【土地の工作物等の占有者及び所有者の責任】

① 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

② 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。

③ 前2項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。


 

 この条文の規定によると、土地の工作物(竹木については2項)の設置又は保存に瑕疵があることによって他者に損害を与えた場合は、第1義的には、占有者(例えば賃貸マンションなどの場合は、賃貸している人)、第2次的には所有者が責任を負うことになります。そして、「設置又は保存に瑕疵」とは、土地の工作物の設置された場所の環境、通常の利用者の判断能力や行動能力を具体的に考慮して、本来備えるべき安全性を欠いている状態を指すといわれています。

 例えば、看板などを設置していたが、ネジ等の締付けが不十分であったような場合で、台風等の暴風ではなく、日常的な風の影響を受けて落下してしまい、よって通行人に怪我をさせたというような場合には、「普通は、落ちるわけがないものが落ちた⇒本来備えるべき安全性を欠いていた」ということで、比較的容易に設置又は保存に瑕疵があったと認められることになります。

 しかし、今回の台風24号の様に、通常の防災上の想定を上回る暴風が吹き荒れて、看板が吹き飛ばされ、通行人に当たってしまったような場合には、「落ちるわけがない」という事が言えないため、本来備えるべき安全性を備えていたかどうかは不明であるとして、通行人の方による占有者若しくは所有者に対する損害賠償請求は、認められない可能性が十分にあります。

 もちろん、台風が来る前から、留め具が外れかかっており危険な状態であったなどの事情を立証できれば、本来備えるべき安全性を欠いていたと認められる可能性はありますが、なかなか台風が来る以前の当該工作物の状態が、どのようなものであったかを立証することは困難であるといえます。

 したがって、台風24号の様に、通常の防災上の想定を上回る規模の暴風雨になると、裁判によって、工作物の占有者・所有者の責任を追及することはかなり困難であるというのが結論となります。

 なお、 マンションに設置された工作物が飛んできて被害を被ったような場合に、当該マンションの管理会社に連絡すると、管理会社からは「自然災害でこちらには責任がない。」などと冷たくあしらわれ、謝罪すらされない場合が多いようです。しかし、当職としては、この様な対応は最悪であると思います。法的責任はともかく、自身の占有している工作物が迷惑を掛けた訳ですので、道義的責任として謝罪くらいはされるべきかと思います。その様な不誠実な対応が争いを大きくし、やがて裁判等の争いに繋がってしまうことになります(見通してとしては勝訴できるとしても、それでも裁判に対応しなければならない応訴の負担というものが発生し、訴えられる側にもデメリットはあります。)。紛争予防の見地から、できる限り、相互に思いやりを持って接して頂きたいと思います。

 

 最後に、法律相談に行って、法的責任追及は難しいと言われた場合にも、加入されている御自宅の火災保険や車両の任意保険などで補償される場合がありますので、一度ご確認されることをお勧めします。 

〈弁護士 松隈貴史〉