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弁護士雑感

【弁護士雑感】コロナウイルス感染症の拡大について

 本日(令和2年11月18日)現在、コロナウイルス感染症に感染した方の人数が、2100人超と過去最高となりました。そこで、今回は、企業の経営者の方に是非とも知っておいて頂きたいコロナ関連の法律知識について、少し書いてみようかと思います。

 今回は、コロナウイルス感染症の拡大を受けて、特に多かった①流通が止まり、原材料が確保できず工場が稼働できないため、従業員に休業を要請したが、給料を支払う必要はあるのか、という御質問と、②コロナウイルス感染症の対策を特に取っていないが、クラスターなどが発生した場合に損害賠償請求をされることになるのか、という御質問の2点に絞って考えてみたいと思います。

 まず、①についてですが、休業の要請が、使用者側の不可抗力(Ⓐその原因が事業の外部から発生した事故であること、Ⓑ使用者が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であったことの二つの要件を満たす)による場合には、使用者は、従業員に対して給与を支払う義務はないことになっています。

 一方で、雇用契約上の労務の提供ができなくなったことについて、「債権者(使用者側)の責めに帰すべき事由(故意・過失または信義則上これと同視できる場合)」(民法第536条第2項)が認められた場合には、従業員は賃金債権を失いませんので、その全額を使用者は従業員に対して支払わなければなりません。また、就業規則等において、上記責任を負わない旨を定めていたとしても、「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合には、使用者は、従業員に対し、当該従業員の平均賃金の60%以上の休業手当を支払う必要があります(労働基準法第26条)。

 したがって、①のようなケースでは、使用者側の不可抗力による休業要請であったと認められるか否かが結論の分かれ目なります。

 従業員の方にも生活があるのですから、使用者側は、「コロナウイルス感染症のせいだ」などという理由だけで、何の努力もせずに給与を支払わなくてもいいという結論にはならないということは肝に銘じておいて頂く必要があります。

 次に、②についてですが、聞いたことがある方も大勢おられると思いますが、「使用者は、右の報酬支払義務にとどまらず、労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という。)を負っているものと解するのが相当である。もとより、使用者の右の安全配慮義務の具体的内容は、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等安全配慮義務が問題となる当該具体的状況等によって異なるべきものである(最高裁昭和59 年4月10 日第三小法廷判決)」と判示しており、使用者は労働者に対して安全配慮義務を負っています。

 したがって、仮にクラスターなどが会社内において発生してしまうと、当然のことながら会社が上記安全配慮義務をしっかりと履行していたのか否かが問われることになります。そして、何の対策も練っていないとなると、当然安全配慮義務違反は認められやすくなります。コロナウイルス感染症は、重症化すると死亡することもある非常に危険な感染症ですので、安全配慮義務違反が認められてしまうと会社には莫大な損害が生ずる可能性があり、その意味でも安全配慮義務の徹底は不可欠です。

 コロナウイルス感染症関連のニュースが、半年以上当たり前の様に報じられることに伴い、感染したらしたで仕方ないという風に、何処かで気の緩みが出てきている企業がかなり増えてきている気がしています。今一度気を引き締め、コロナウイルス感染症拡大防止のために、企業内の在り方について見直して頂くよう、切に願う次第です。

                            〈弁護士 松隈貴史〉