事務所発信記事

弁護士雑感

【弁護士雑感】新型コロナウイルスによる裁判への影響

新型コロナウイルスの感染拡大が全国的(あるいは全世界的)に懸念され、様々な分野で大きな影響が出るようになってから1年を超えました。

この間、日本でも2度にわたり緊急事態宣言が発出され、なんとか感染の急拡大は抑えられたといえるものの、新規感染者数の減少には下げ止まりが見られ、むしろ再び増加傾向に移るのではないかとの心配も杞憂とはいいがたいところです。

ワクチンの開発と接種開始は、まだ端緒に過ぎないとはいえ明るい話題ですが、変異株の出現や拡大などの情報もありますので、我々一市民としては、これまで通り感染予防に努めるほかないものと思うところです。

さて、そんな新型コロナウイルス感染拡大による多大な影響を受けた1年でしたが、我々司法の場においても様々な影響や変化がありました。

以前、似たようなテーマでお話をいたしましたが、前回は「コロナの影響をご説明し、理解していただくこと」を目的としておりましたが、今日はそんな「新型コロナウイルス感染拡大が裁判に与えた影響」について、少し別の角度からお話をしようと思います。

1 相次ぐ期日の延期と、その影響

 まず、なんといっても影響のうち最大のものは昨年4月からの第1回目の緊急事態宣言下における、「全国の裁判所における裁判期日が軒並み取り消され、緊急事態宣言後に再指定をされた」ことです。

 通常時であれば、民事訴訟等の裁判期日はおおむね1か月から1か月半程度の期間で指定され、行われるのですが、この時は4月上旬に予定されていた期日が7月下旬まで延期されるということも珍しくありませんでした。

 また、当然この間も新規の訴訟提起等は行われておりましたので、その分裁判所の事件処理はパンク状態に近づき、緊急事態宣言解除後も2か月程度の間隔で期日指定がなされる状態が続いていました。

 ただ、裁判所・原告被告双方による事件処理への尽力などもあり、現在は後述する家庭裁判所を除き、ほぼ通常の訴訟運用状況に戻っており、おおむね1か月から1か月半程度の間隔で裁判期日が開催されています。

2 家庭裁判所等での時間帯の変更

 家庭裁判所では、いわゆる「調停」手続きが事件処理の多数を占めることとの関係上、地方裁判所のように事件の審理をテンポアップするということが困難です。また、地方裁判所における訴訟とは異なり、どうしても出席当事者数も多くなり、密にならないために従来であれば調停室として使用していた部屋を待合室とするために開放する必要なども生じています。

 このようなことから、家庭裁判所では従来は午前午後の2コマ制で、1コマあたり2時間程度の時間を確保していたところを、午前1コマ、午後2コマとし、1コマあたり1時間20分に短縮することにより、事件処理数を増やそうとしています。

 もっとも、1時間20分では双方の意見・主張を聴取するところまでで終わってしまい、実質的な協議は次回までの双方で検討しておくという方法にならざるを得ないときもあり、同時進行できる事件数は増えているものの、なかなか事件が終わらないこととなり、抱えている事件数の減少(解決に至った事件数の増加)にはなかなか至らないというのが実際のところです。

 そのため、家庭裁判所においては現在でも大量の事件を処理しきれておらず、上記のように1コマあたりの時間を短くしながらも次回期日まで2か月以降の間隔を余儀なくされるという事態が続いています。

3 Web会議システムの急激な普及

  コロナ禍での裁判のありようとして、裁判所が積極的に導入しようとしている(あるいはすでに導入している)のが、Microsoft Teamsを用いたWeb会議システムの利用です。

 新型コロナ感染拡大前からも、いわゆる司法のIT化などの観点から、Web会議システムを裁判に活用することについてこれを前向きに考える意見はあったのですが、実際の制度として導入されることは、少なくとも一般的にはありませんでした。

 しかし、第1回目の緊急事態宣言下での裁判期日の軒並みの延期及びそれに伴う裁判所の事件処理能力がパンクするという状況を目の当たりにし、裁判所も「コロナ禍での裁判の運用の在り方」というものを考えるようになったものと思われ、今ではかなり一般的にWeb会議システムを用いた裁判期日が開かれています。

 もちろん、Web会議システムを用いた裁判期日といっても、裁判のメインが両当事者が出席したうえで開催される「口頭弁論期日」であることは間違いがなく、すべての裁判手続きをWeb会議システムで賄うことはできませんので、これまでは電話会議などで行っていたものをWeb会議で行うようになったというものにすぎませんが、それでも非常に大きな変革であるといえるでしょう。

 ただ、Web会議システムの導入にほとんど興味を示さない裁判官もおり、裁判官のタイプ・性格の問題なのかわかりませんが、今でも足しげく裁判所に足を運ぶことが原則であるということは変わっていません。

4 余談的な話

  以上は少しまじめな視点での話ですが、やや余談的な影響を考えれば

(1)和解協議などの場面で猫も杓子も「コロナの影響で金銭的に苦しい」と言い訳する傾向が見られます。

 これは請求を受ける側、請求する側双方ともにみられる傾向です。

 まさか「コロナを理由にすれば何とかなる」などと考えているわけではないと思いますが、あまりにもこのような主張を受けることが多いため苦笑するしかないところではあります。

(2)裁判所において出頭して裁判期日を行う場合でも、裁判所職員の手作りと思われる「遮蔽版」が設置されるようになりました。

この「遮蔽版」ですが、役目を果たすには十分なのでしょうが、作りの粗さや素材のチープさなどから、「司法行政における裁判所への予算の低廉さ」を想起させるものとなっており、よく言えば裁判所の廉潔性を見せてくれますが、悪く言えば裁判所の威厳を損なうのではないかと思っています。

(3)刑事事件などでは正直なところあまり新型コロナウイルス感染拡大の影響は見られないように思います。

コロナ禍でも逮捕するべきとの判断であれば逮捕勾留を行っているようですので、いわゆる「留置施設がコロナで大変なので逮捕しない」というような運用はなされていないようです。また、少なくとも弁護人接見などに関しては影響を感じることもありません。

この辺りは、やはり直接一般国民の権利義務に影響を与える刑事手続きであるということから、かなり厳格に運用が維持されているようです。

ただ、その分警察署などではかなり厳格にコロナ対策がなされているようですので、今までのところ刑事手続きの場が新型コロナ感染拡大の場(クラスター)などとなったということは生じていないように思います。 

5 以上のように、新型コロナウイルス感染拡大の影響は司法手続きにおいても大きな影響を与えており、その影響は(ほぼ)解消されたもの、むしろ発展を促したもの、今に至るも(ほぼ)解消されていないものなど多様です。

 冒頭申し上げました通り、まだまだ新型コロナウイルス感染拡大が沈静化したとはいいがたく、変異株という新しい懸念もあります。

 お仕事や学校、子育てや介護などなど、そのほかにもさまざまお忙しくご事情はあることとは思いますが、「できる限り」というものであったとしても、感染予防に気を付けて行動をしていただければと願ってやみません。

〈弁護士 溝上宏司〉