相続・遺⾔
相続⼿続き
平成27年度より、相続税法が改正され、相続税が従来よりも⼤きく引き上げられました。それに伴い、当事務所でも相続に関するご相談が⾮常に増えております。
相続が発⽣した場合、まず、相続⼈は相続財産を相続するか(単純承認)、それとも相続放棄をするか、あるいは被相続⼈の債務の限度で相続するか(限 定承認・ただし相続⼈全員の同意が必要)を選択しなければなりません。限定承認・相続放棄の申述は被相続⼈が亡くなったのを知った時から「3ヶ⽉」以内にしなければならない(⺠法915条)という期間制限がありますので、注意が必要です。
⼀⽅で、3ヶ⽉間、限定承認・相続放棄の申述を家庭裁判所に対して⾏わなかった場合、⾃働的に単純承認したものと看做されます。また、相続財産を処分する等、相続することを前提とする⾏為を⾏った場合にも、相続を承認したものと看做されます(法定単純承認・⺠法921条)。
次に相続⼈が相続を単純承認した場合、仮に被相続⼈が「遺⾔書」を残していなかった場合には、⺠法上の法定相続分に従い、相続⼈は相続財産を共有することになります。例えば、夫が亡くなり、妻(配偶者)と⼦供⼆⼈が相続⼈となった場合は、夫の財産を妻が2分の1、⼦供達が各4分の1ずつ相続することになります(詳細は下記を参照ください)。
そして、相続⼈は法定相続分を前提に、具体的に誰がどの財産を相続するかについて、遺産分割協議を⾏うことになります。なお、この遺産分割協議には期限の定めがありませんが、相続税の申告期限は「10ヶ⽉」となっておりますので注意が必要です。
相続⼈の範囲や法定相続分は、⺠法で次のとおり定められています。
(1) 相続⼈の範囲
亡くなられた⽅に配偶者がいる場合は、常に配偶者は相続⼈となります。配偶者以外の相続⼈は、次の順序で配偶者と共に相続⼈になります。
第1順位 亡くなられた⽅の⼦供
なお、⼦供が既に亡くなられているときは、その⼦供の直系卑属(⼦供や孫など)が代襲して相続⼈となります。
第2順位 亡くなられた⽅の直系尊属(⽗⺟や祖⽗⺟など)
第2順位の⽅は、第1順位の⼈がいないときに限り相続⼈となります。
第3順位 亡くなられた⽅の兄弟姉妹
兄弟姉妹が既に亡くなられているときは、その⼈の⼦供(孫は含まない)が相続⼈となります。第3順位の⽅は、第1順位の⼈も第2位の⼈もいないときに限り相続⼈になります。
なお、相続放棄があった場合、放棄された⽅は初めから相続⼈でなかったものとされます。また、よくご質問がございますが、内縁関係にある⽅は現在の所は相続⼈に含まれませんので、注意が必要です。
(2) 法定相続分
ア 配偶者と⼦供が相続⼈である場合
配偶者が2分の1 ⼦供が残りを等分
イ 配偶者と直系尊属が相続⼈である場合
配偶者が3分の2 直系尊属が残りを等分
ウ 配偶者と兄弟姉妹が相続⼈である場合
配偶者が4分の3 兄弟姉妹が残りを等分
⺠法に定める法定相続分は、相続⼈の間で遺産分割の合意ができなかったときの遺産の取り分であり、必ずこの相続分で遺産の分割をしなければならないということはありません。
遺⾔書の作成
遺⾔書は、相続問題を争族問題とさせないために、近年相談が急増しています。特に、
- ⼦供さんがいない夫婦(※1)
- 相続⼈間の仲が悪い(※2)
- 相続⼈の中に⾏⽅不明者がいる(※3)
- 内縁の妻がいる(※4)
- 孫に財産を残したい(※5)
というような⽅は、遺⾔書を作っておかれると良いでしょう。
(※1)夫婦の⼀⽅が死亡した場合、残された配偶者と被相続⼈(財産を残して死んだ⼈)の兄弟姉妹(被相続⼈の親が⽣きていれば親)が相続⼈となります。この場合、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1という法定相続分となります。夫婦で築いた資産を資産形成には無関係な兄弟姉妹を交えて遺産分割協 議をしなければならず、紛争となりやすい典型例です。
(※2)相続⼈間の仲が悪いと、話合いにならず遺産分割協議書を作成できない可能性があります。
(※3)遺産分割協議書は、相続⼈全員の関与の下に作成しなければならないのが原則ですので、相続⼈の⼀⼈でも⾏⽅不明の場合、⼿続きが⾮常に複雑になります。
(※4)他に相続⼈がいる場合、内縁の妻は遺⾔書が無ければ相続財産を⼀切貰うことはできません。
(※5)お孫さんに財産を遺されたい場合は、遺⾔書を残す必要があります。
公正証書遺⾔の勧め
⾃筆で作る遺⾔(⾃筆証書遺⾔)は⾮常に簡易にできます。しかし、⾃筆証書遺⾔は紛失・改竄の恐れがあります。⼀⽅で、公正証書遺⾔は費⽤が掛かりますが、紛失・改竄の恐れが無く安全安⼼です。また、⾃筆証書遺⾔は家庭裁判所における検認の⼿続も必要ないので、速やかに移転登記や預⾦の払出しなどの⼿続ができます。したがって、当事務所では公正証書遺⾔の作成をお勧めしています。
当事務所では、相続問題に関する法律相談から、
(1)遺⾔書の作成
(2)遺産分割協議書の作成
など、お客様のニーズに合わせた法的サービスを提供いたします。
弁護⼠に遺⾔書の作成を依頼する場合の作成費⽤の⼀例
項⽬ | 分類 | ⼿数料 | |
---|---|---|---|
遺⾔書作成 | (※)定型 | ⾦10万円以上⾦20万円以下 | |
(※)⾮定型(基本) | 遺産総額が300万以下 | 20万円 | |
遺産総額が300万円超3,000万円以下 | 遺産の額の1%+17万円 | ||
遺産総額が3,000万円超3億円以下 | 遺産の額の0.3%+38万円 | ||
3億円超 | 遺産の額の0.1%+98万円 | ||
⾮定型(特に複雑⼜は特殊な事情がある場合) | 弁護⼠と依頼者との協議により定める額 | ||
公正証書にする場合 | 前項の⼿数料に3万円を加算した額 |
(※)定型とは、遺産の範囲について特に調査などを必要とせず、遺⾔者の意思に特段不明確な点が存在しない場合など限定的な場⾯に限定されます。基本的には、⾮定型の⾦額になると考えて頂いてよろしいかと思います。