2024/04/18 弁護士雑感
【弁護士雑感】弁護士報酬というものについて
皆さんが弁護士に相談・依頼をしようとお考えになられたとき、重要なものの中の一つがやはり「弁護士費用」についてではないでしょうか
今回は、「弁護士費用」について、少しお話をしてみようと思います。
1 弁護士費用の概説
2004年4月1日までは、日弁連が定めた統一の弁護士報酬基準(※1)というものがあり、弁護士はそれに従って報酬を決める必要がありました。
2004年4月1日以降、これが改定され、各法律事務所毎に弁護士報酬基準を作成することになり、弁護士報酬基準の内容は各法律事務所に一任され、自由化されることになりました。
弊所でも、この改定を受けて、独自の弁護士報酬基準を作成しておりますが、その内容は基本的には従来の統一の報酬基準(旧報酬基準)とほぼ同じ内容になっています。
ただ、当職の知る限りこれは日本の弁護士事務所の大多数(感覚的には9割以上)が同様の取り扱いをしているものと思われますので、弊所も他の弁護士事務所も、ある意味では横並びの報酬体系であるといってよいのかもしれません。
なお、これと異なる弁護士報酬の取り決めをしていると思しき法律事務所は大きく分けて3つのタイプに分類されると思われます(当職の偏見ですが)。
一つ目は東京や大阪などの都心部に本拠を置き、弁護士を数百人規模で抱えており取り扱い案件として主に渉外案件や非常に大きなビジネス案件、知財案件などに特化したいわゆる「巨大ローファーム」型の事務所です。※2
このようなタイプの事務所は主として取り扱う案件が一般的な事件とは大きく異なることや、その経済的利益額が極めて巨額に上ることなどから、通常の弁護士報酬基準とは異なる特殊な報酬基準を定めていることが多いものと言えます。
二つ目はインターネットやテレビCMなどを積極的に展開し、一昔前であれば債務整理、今であればB型肝炎などに代表される大規模定型的な処理になじみやすい案件を多数抱えるタイプの事務所です。
このタイプの法律事務所も、主として取り扱う案件が一般的なものというよりは定型的でシステマチックに処理することに適したものであり、かつ、これらをシステマチックに処理することに特化した体制を整えていることもあり、その報酬基準もまたシステマチックかつ定型化されたものが多いというのが印象です。
三つ目は、主にご高齢の弁護士の方などに多いのですが、生活の糧を得るためというよりも、ある意味で「趣味的」に弁護士業をやっておられる個人事務所です。
2 弁護士報酬の基本的な定め方
ご相談者・ご依頼者との間で委任契約を締結させていただくにあたって、やはり基本的な形態はいわゆる「着手金・報酬方式」によるものです。
これは、ご依頼者の「得られる経済的利益」(※3)をもとに、これが金300万円以下の場合には着手金として8%、報酬金として16%、これが300万円を超えて3000万円以下の場合には着手金として5%+9万円、報酬金として10%+18万円などの方法で算出するものです。※4
その他の弁護士報酬の定め方ですと、例えばタイムチャージ方式や完全固定方式、手数料としてご負担をいただく方式などもありますが、基本的には「ご依頼をいただく事件の内容、規模、取り扱わせていただく業務内容」によって、どの弁護士費用体系を採用させていただくかを決定していく・・ということになります。
3 弁護士費用の敗訴者負担について
ご相談者からよく「弁護士費用については、訴訟の相手方から取って欲しい」というご要望やご質問をいただくのですが、残念ながら現在の日本では一部の例外を除き、弁護士費用の敗訴者負担制度というものは認められていません。※5
そのため、原則として弁護士費用については自己負担となってしまい、相手方にこれを負担させるということはできないものという外ありません。
なお、民事訴訟の主文においては「訴訟費用は○○の負担とする」との一文が入るのですが、ここでいう「訴訟費用」とは訴訟提起時に貼付する必要のある収入印紙代、予納郵券などを指し、弁護士費用はこれに含まれませんので、誤解のないようにご留意いただきたいところになります。
4 当事務所での特別プランについて
以上の他に、弊所では個々の事案に則して、上記2で書かせいていただいた旧報酬基準に準拠した通常の弁護士報酬の定め方とは異なる特別な(オーダーメードの)リーガルサポートプランのご提案もさせていただいています。
例えば過去の一例になるのですが、比較的安価な定額の月額制で弁護士費用を定めさせていただき、サポート期間内の法律相談・文書作成・文書チェック・相手方との簡易なやり取りなどはサポートプラン内の業務として対応させていただく(※6)というものや、同じく犯罪被害者参加制度を用いた刑事事件への参加に関するサポート、遺言書作成や将来の相続紛争回避のためのご親族への説明と理解を得るための活動のサポートなどがありました。
ご相談者の直面しておられる紛争や、事案の性質(例えばまだ紛争として機が熟していない)によっては必ずしも弁護士が前面にでて相手方と交渉をすることが望ましいというケースばかりではありませんので、そのような場合には、ある意味で裏方としてサポートをさせていただく必要もあり、そのようなケースに適したリーガルサービスをご提供しています。
これは弊所の特徴的な活動であるということができます。※7
5 あまり長々と書いてもいけませんので、今回はここまでに致します。
弁護士に相談しようかどうか悩まれた場合、現実的にいってやはり弁護士費用のご負担というものは軽視できないものです。
ですが、漠然とした不安感だけで相談を躊躇され、受けられるはずの(そして受けていれば紛争解決につながったはずの)リーガルサービスを受けられないということは避けなければなりません。
今回のブログ記事で、少しでも弁護士費用についてのご不安が解消されますことを期待しています。
〈弁護士 溝上宏司〉
※1 一般に「統一報酬基準」とは「旧報酬基準」とは呼ばれているものです
※2 いわゆる「四大事務所」などと一括りにされる事務所などをイメージしていただければそう遠くないものと思います。
※3 「得られる経済的利益」とは大雑把に言えば請求する側の場合には「いくら請求するのか」、請求される側の場合には「支払う必要がないと争っている金額」を指します
※4 詳細は弊所弁護士報酬基準
https://hashimoto-law-office.jp/fee/
をご参照ください。
※5 例えば不法行為に基づく損害賠償請求においては純損害額の10%程度相当額の範囲で弁護士費用を「損害」として組み込むことが認められることが多いですが、一般の債務不履行責任に基づく請求などでは認められないというのが実務の運用です。
※6 離婚事件や刑事事件、労働事件及びクレーム対応などのような、一応の解決後も一定程度の継続的サポートが望ましい事案に適しています。なお、サポート終了のお申し出はもちろん自由です。
※7 もちろん、他の事務所においても類似のサービス、お力添えを提供している事務所はあるかと思いますが、弊所の「ウリ」の一つであると自信を持っております。