2024/07/01 弁護士雑感
【弁護士雑感】軽犯罪法について
1.はじめに
今回は、軽犯罪法について条文とともに紹介していきます。
「え、そんなことで犯罪になるの?」といったことが軽犯罪法に規定されています。
軽犯罪法はその名の通り、軽微な秩序違反に対応するために規定されたものですが、甘く見ることはおすすめできません。
これから紹介していく行為は、街で見かけたことがあるかもしれません。
もし有罪となれば、どのような刑罰が科せられるかもあわせて紹介いたします。
2.軽犯罪法で逮捕される可能性
令和5年度の軽犯罪法違反による検挙数は、7665件です。同年の迷惑防止条例違反の検挙数が9771件であることから、迷惑防止条例違反には及ばないものの、それなりの検挙数があることがわかります。
このデータからは、軽犯罪法は、軽い犯罪であるから逮捕されないとはいえないということがわかりますので、軽犯罪法違反で逮捕される可能性は十分にあり得ます。
(参考)犯罪統計資料令和5年1~12月分【確定値】
3.道路や公園で小便をする行為
道路や公園で、小便をしている方を飲み会が多い金曜日や土曜日の夜に、繁華街を歩いていると一度は見かけたことがあるのではないでしょうか。
アルコールは強い利尿作用があることから、トイレに行きたくなることが多くなりますので、飲食店を出た後の帰り道などで、我慢できずにしてしまったのではないかと思います。
このような、公衆の道路などで、小便をする行為は、軽犯罪法第1条第26号に違反します。
またこれに関連して、昼間夜間問わず、歩道等でたんつばを吐く方を見かけることもあります。このような行為も軽犯罪法第1条第26号に違反します。
<軽犯罪法第1条第26号>
「街路又は公園その他公衆の集合する場所で、たんつばを吐き、又は大小便をし、若しくはこれをさせた者」
4.他人の進路に立ちふさがる、つきまとう行為
他人の進路に立ちふさがったり、群がったり、不安や迷惑を覚えさせるような方法で他人につきまとった場合は、軽犯罪法第1条第28号に違反します。
これは、個人の移動の自由を保障するために設けられた規定です。
<軽犯罪法第1条第28号>
「他人の進路に立ちふさがって、若しくはその身辺に群がって立ち退こうとせず、又は不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとった者」
5.他人の家屋などにはり札をする行為
私は見たことはありませんが、たまにドラマのシーンでも、ある家に大量の誹謗中傷が書かれたはり紙が入り口付近に貼られていることがあります。
このようにみだりに他人の家にはり紙を貼る行為は、軽犯罪法第1条第33号に違反します。
また反対に看板や標示物があった場合にそれを剥がす行為も同号に違反します。
<軽犯罪法第1条第33号>
「みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をし、若しくは他人の看板、禁札その他の標示物を取り除き、又はこれらの工作物若しくは標示物を汚した者」
6.軽犯罪法違反の罰則
軽犯罪法に違反した場合には、拘留又は科料に処せられることとなります。
拘留とは、1日以上30未満の期間を定め、刑事施設に拘束される刑罰です。
ここで1つ注意が必要なのが、拘留(こうりゅう)と勾留(こうりゅう)は読み方が同じで、身体拘束がされるという点も共通していますが、全くの別物です。
勾留は、被告人や被疑者など罪を犯した疑いのある者の身体を拘束するものであり、他方、拘留は、上記のとおり、刑罰が確定して刑事罰として科せられるものです。
すなわち、有罪となれば前科がつくこととなります。
科料とは、1000円以上1万円未満の罰金を支払わせる刑罰となります。
7.軽犯罪法に違反する行為をした場合は必ず取り締まりが行われるか
これまで見てきたように軽犯罪法は、誰でも犯し得ることを犯罪として規定しています。
そのため、軽犯罪法には、次のような条文を規定し、警察等に対し、必要以上に取り締まりをさせないための注意規定が設けられています。
ただし、ただちに取り締まりがされないからといって、軽犯罪法を甘くみることは危険といえます。
<軽犯罪法第4条>
「この法律の適用にあたつては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。」
8.おわりに
以上のように、軽犯罪法は、誰もが違反し得るような行為が規定されており、違反すれば罰則を科せられるおそれもありますし、そこまで長くないので軽犯罪法は一度読んでみるべきかもしれません。
〈弁護士 去来川祥〉