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2024/10/04 新着情報

会社設立時における定款作成の注意点

株式会社設立時に必ず必要となるものが定款です。

本記事では、スタートアップ・ベンチャー企業を設立することを念頭に置いて、定款作成時の注意点について解説していきます。

 

1.定款とは

定款は、会社の基本的なルールが記載された書類のことを言います。よく例えで「会社の憲法」などといわれたりもしています。

定款の内容としては、会社法上求められている目的商号本店の所在地設立に際して出資される財産の価額又はその最低額発起人の氏名又は名称及び住所などの絶対に記載しなければならない事項や任意で記載する事項などがあります。

 

2.定款に記載する本店所在地

定款に記載すべき本店の所在地は、最小行政区画である市町村(東京都の特別区を含み、政令指定都市にあっては市)により表示すれば足り、何丁目何番地まで表示する必要はありません。

そのため、東京の港区に本店を置く場合は、「東京都港区」までで十分であり、大阪市に本店を置く場合は、「大阪府大阪市」までで良いということになります。

もちろん、何丁目何番地まで記載することは可能です。

しかし、その場合の注意すべきこととしては、仮に「東京都港区六本木〇丁目〇番〇号」のような定めをし、設立後、「東京都港区虎ノ門〇丁目〇番〇号」に移転する場合は定款変更の手続をしなければならなくなります。

(定款変更は、株主総会に過半数の株主が出席し、かつ、出席株主の2/3以上の賛成による決議を必要とする株主総会特別決議が必要となる手続によることになります。)

以上のことから、同じ港区内での移転にも関わらず手続が煩雑になりますので、「東京都港区」までで記載を終わることが良いといえます。

 

3.発行可能株式総数

発行可能株式総数とは、当該会社が発行することができる株式数の上限を定めたものになります。そのため、例えば1000株を発行可能株式総数として定めた場合は、株式を1001株を発行するためには、定款変更しなければなりません。

発行可能株式総数の上限は、株式の譲渡制限を設けていない会社(公開会社)の場合、発行可能株式総数は、既に発行している株式の総数(発行済株式総数)の4倍以内でなければならないという制限があります(いわゆる上場企業がこれにあたります。会社法第113条第3項)。

しかし、未上場の会社はこの制限が適用されませんので、何株にしても良いです。

注意点としては、スタートアップ・ベンチャー企業は出資を前提として事業を拡大していくことが多いため、始めから発行可能株式総数を少なく設定すると出資を受けるタイミングで発行できる株式が足りず、発行可能株式総数を増やす手続をしなければならなくなります。

(この手続も定款変更手続となります。)

そのため、出資を受けることを前提とする場合は、一概に何が正解かはありませんが、10,000,000株ぐらいにしてみても良いかもしれません。

ただし、増やしすぎると上場したタイミングで、発行可能株式総数は、発行済株式総数の4倍までとのルールが適用され、次は減らす手続をしなければならないため、この点も注意が必要です。

 

4.取締役の人数の定め

会社法上は、取締役が1名いれば株式会社を設立できます。

そのため、設立時に取締役が1名であれば、「当会社の取締役は、1名とする。」との記載で足ります。

しかしながら、スタートアップ・ベンチャー企業が成長していくにつれ、役員も増えることが想定されます。その場合、この記載であれば、2名が取締役として就任するためには、定款変更の手続をしなければなりません。

そのため、「当会社の取締役は、1名以上とする。」としておくべきでしょう。

 

5.最後に

設立時定款は、事業が成長するにつれ変更しなければならない場面を避けれないこともありますが、設立時にできるだけ変更を少なくする工夫ができれば手続が煩雑にならずに済みますので、本記事で取り扱った部分に関しては、特に注意してみてください。

 

〈弁護士 去来川祥〉

© 弁護士法人橋下綜合法律事務所