弁護士雑感

2017/11/27 弁護士雑感

【弁護士雑感】民法改正について

 民法の一部改正を行った「民法の一部を改正する法律」が、一部除き、公布の日である2017年6月2日から3年以内に施行されることになりましたので、今回はそのことについて少し書こうと思います。

 我々弁護士としては、法律の最も基本ともいえる民法が改正されるとなると、当然「知らなかった」などという弁解は許されませんので、改正点について徹底的に勉強しておく必要があります。

 私としても、まだまだこれから深く詰めていく段階なのですが、一通り読み通した印象では、今までの民法では不明確であった点等が、最高裁の判決などを踏まえてより分かりやすく変更されており、非常に良くなったのではないかと感じています。

 特に、我々弁護士泣かせでもあった職業別に定められた短期の消滅時効についての規定が削除され、原則として一律「5年」と変更されたことは非常に素晴らしい改正点だと感じています。そもそも、権利について一定期間放置しておくと消滅するという発想自体、私としては違和感を覚えておりますので、消滅時効の期間が長くなることには大賛成です。

 また、不法行為について、現行民法では「被害者又は法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年」で消滅時効にかかるとされており、改正民法でも基本的には同じなのですが、「人の生命又は身体を害する不法行為」については「5年間」に延長されており、こ点も非常に評価できる改正点だと思います。

 弁護士が大幅に増加した昨今であっても、まだまだ多くの方々にとっては、弁護士に相談するというのは気の重い作業であり、中々踏み出せないという方も多く、そうこうしている内にあっという間に時間が過ぎてしまい、消滅時効に掛ってしまったという方も大勢見てきましたので、実務的な感覚としては「3年」という期間は非常に短いという感覚があります。

 あと、多くの方に直結する大きな改正点で言うと、遅延損害金などの合意がない場合に適用される法定利率が、年5パーセントから年3パーセントに引き下げられました。確かに、今どき、何処の銀行に預けても5パーセントもの金利が付くことはありませんので、そういう意味では5パーセントいう利率は非常に大きいようにも思えます。しかし、遅延損害金というのは、そもそも履行すべき時期に履行しないことに対する制裁の意味合いもありますので、私としては、債務者に履行を促すという意味でも特に引き下げる必要は無かったのではないかと考えています。

 

 その他にも色々と大きな改正点はあるのですが、基本的に今回の改正では、かなりの条文が加筆修正され、解釈上争いとなっていた文言等が解消されており、普通、法律が改正されると我々弁護士は勉強する時間が増えるので大変になるのですが、今回の民法改正に関しては、弁護士としても非常に有難い改正であったといえるかと思います。

 

 最後に今の民法は、昔のカタカナ表記であった頃に比べて遥かに読みやすくなっておりますので、皆様も、一度、目を通してみられることをお勧めします。民法には、日常生活において知っておくと役に立つことが満載ですので、きっと面白いと感じて頂けるかと思います。

                            〈弁護士 松隈貴史〉

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