2023/03/08 弁護士雑感
【弁護士雑感】少年法改正について
2022年6月30日に広島県府中町で、8人の少年グループの包囲を逃れようとして、高さ24メートルの立体駐車場の屋上から会社員の男性(19)が飛び降りるという凄惨な事件がありましたが、その事件について思う所が多々ありましたので、そのことについて少し書いてみたいと思います。
まず、少年法の仕組みですが、少年(19歳以下)の事件は全てまずは家庭裁判所に送られ、家庭裁判所が処分を決定することになります。家庭裁判所が決定する処分には、①保護処分(少年院送致、保護観察等)、②不処分、③検察官送致などがあり、③の検察官送致とは、家庭裁判所が、刑罰を科すべきと判断した場合の処分のことであり、一般的には「逆送」と呼ばれています(原則として逆送決定がされる「重大な事件」を「原則逆送対象事件」といい、故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた罪(殺人罪、強盗致死罪など)がそれにあたります。)。
公職選挙法の改正により選挙権年齢が20歳から18歳に引き下げられ、民法改正により成年年齢も同じく20歳から18歳に引き下げられました。それに伴い、少年法等の一部を改正する法律も成立し、18、19歳の者が罪を犯した場合には、その立場に応じた取扱いとするため「特定少年」として、「原則逆送対象事件」が拡大(現住建造物等放火罪、強盗罪、強制性交等罪など)し、逆送決定後は20歳以上の者と同様に取り扱われるなど、17歳以下の者とは異なる取扱いがなされることになりました。しかし、家庭裁判所にまずは送られるといういわゆる「少年」としての扱いに変更はありませんでした。
選挙権があり、民法上も成年として扱われている18歳以上の者について、少年法上は未だに「特定」が付されているとはいえ「少年」とされていることに対し、私としては大きな矛盾を感じざるを得ず、年々凶悪事件が低年齢化している現状に鑑みると、正直、18歳以上の者は、少年法の適用対象外とすることで良かったのではないかと思います。
なお、少年法の一部改正により、これまでは少年のとき犯した事件については、実名・写真などの報道は禁止されていましたが、18歳以上の少年(特定少年)のとき犯した事件について起訴された場合には、その禁止は解除されているはずであり、上記の様な極めて重大な事件については、実名での報道がなされてしかるべきだったのではないかと、報道のされ方についても疑問を抱いている今日この頃です。
皆さんは、この事件について、どのようにお感じになられるでしょうか。
〈弁護士 松隈貴史〉