2023/07/28 弁護士雑感
【弁護士雑感】遺言書に関する法律相談について
以前にも書かせて頂きましたが、近年、遺言書の作成に関する御相談をかなり頂いておりますので、改めて、遺言書について簡単に書かせて頂きたいと思います。
まず、遺言書を残しておくことの最大のメリットとしては、相続人間の紛争を事前に予防することができることにあると思いますが、一方で、あまり深く考えずに遺言書を残されてしまうと、逆に紛争を惹起してしまう危険性があります。
例えば、法定相続人が、被相続人の配偶者と被相続人の兄弟姉妹で、被相続人が、「配偶者に全ての遺産を相続させる」旨の遺言書を残されていた場合、兄弟姉妹には遺留分(遺留分とは、一定の相続人のために、相続に際して法律上取得することが保障されている遺産の一定の割合のことをいいます。)というものが存在しないため、遺言書の内容通りに遺産は全て配偶者のものになり、紛争が生ずるということはまずありません。
しかし、法定相続人が、被相続人の配偶者と被相続人の子供で、被相続人が、「配偶者に全ての遺産を相続させる」旨の遺言書を残されていた場合、子供達には遺留分が存在するため、配偶者は、子供達から遺留分侵害請求をされる可能性があります(請求された場合は消滅時効にかかっていない限り、支払義務があります。)。
したがって、自分の思いだけで安易に遺言書を残されてしまうと、後から相続人間の紛争を誘発してしまう危険性がありますので、法律の専門家である弁護士等に、後から紛争を惹起するような内容になっていないか、念のため、御確認だけでも頂いた方が宜しいかと思います。
なお、遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類がありますが、秘密証書遺言については極めて限定的な場合に作成される遺言書になりますので(私も作成したことはありません。)、実務上は、自筆証書遺言か公正証書遺言のどちらかを御選択頂くことになります。
自筆証書遺言は、誰でも直ぐに作成でき、費用も殆どかからない反面、紛失、改ざん、盗用のリスクが非常に高いため、法律家としての立場では、公正証書遺言の作成をおすすめしてきましたが、2020年以降、法務局での自筆証書遺言保管制度というものが始まり、法務局で、作成した遺言書について有効な書式かどうかを確認してもらったうえで、保管してもらえるようになり、自筆証書遺言についても法務局の保管制度を御利用されるのであれば、デメリットは殆ど無くなりました(保管申請手数料も1通につき3900円程度とされており、死亡時には遺言書の存在を知らせる人を1人指定することもできますので、かなり使い勝手は良くなったと考えております。)。
そのため、選択の幅は非常に広がったように思います。
遺言書の作成はとても重要な法律行為です。御不安があれば、一度、当事務所に御相談頂ければと思います。
〈弁護士 松隈貴史〉