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2023/10/23 弁護士動画

【弁護士雑感】盗撮行為について

 以前の雑感において、盗撮行為については迷惑防止条例や軽犯罪法違反の罪で処罰されると書かせて頂きましたが、令和5年6月16日、「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」(令和5年法律第66号)及び「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(令和5年法律第67号。以下「性的姿態撮影等処罰法」といいます。)が成立し、一部の規定を除いて、同年7月13日から施行されておりますので、盗撮行為については、これまでよりも厳しく取り締まられることになりました。注意喚起の意味も含めて、新たな法律も踏まえ盗撮行為に関して、少し書かせて頂きたいと思います。

 まず、性的姿態撮影等処罰法は第2条において、次のように定めています。
第二条 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロ イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態

 一見すると分かりにくい条文ですが、要は、医療目的などの正当な理由もないのに、他人の下着姿を撮影した場合(被写体となる人物が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっている場合は除きます)、起訴までされれば、迷惑防止条例違反の罪よりも重たい3年以下の拘禁刑又は300万円以下という非常に重たい処罰が課せられることになります。

 近年、カメラを搭載したスマートフォンなどの普及によって、盗撮行為に関する記事をほぼ毎日のように目にするようになりました。非常に簡単にできてしまうということに加えて、やってもバレないだろうという心理が働いてしまい、本当に普通の方々が、ほんの少しの好奇心、出来心からその様な行動を取ってしまうケースが殆どなのだと思いますが、逮捕までされてしまうと御自身が想定されている以上に大事になり、一瞬にして社会的信用の全てを失ってしまうというだけでなく、盗撮された被害者の方にも非常に大きな精神的ショックを与えてしまい、一生消えない傷を残してしまうことにもなりかねません。
 したがって、盗撮行為は極めて悪質性の高い犯罪行為なのだということをゆめゆめ忘れず、その様な誘惑にかられる場面に遭遇したとしても、本雑感を思い出して頂き、御自身を強く律して頂ければと思います。

〈弁護士 松隈貴史〉 

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