弁護士雑感

2021/12/07 弁護士雑感

【弁護士雑感】裁判所を見てみませんか

 皆様の中には裁判傍聴を一つの趣味としておられる方もおられるかもしれませんし,そうでなくとも世間的に注目度の高い裁判については傍聴したいとお考え(あるいは傍聴した)の方もおられるかもしれません。

 ただ,事件としても「裁判」ではなく,建物としての「裁判所」について,積極的に興味をもって,ある種の「観光」としてみておられるという方は少ないのではないでしょうか。

 当職がこれまで見てきた裁判所について,「建物」としての裁判所として,面白いものや見どころがあるのではないかと感じた裁判所を少し紹介してみたいと思います。※1

1 東京地方(高等)裁判所

 東京地方裁判所は,恐らく日本最大の大きさの建物規模の裁判所であろうかと思います。

 後述する各裁判所のように,取り立てて「面白い」ものがあるというわけではなく,どちらかというと近代的で合理的な建物に過ぎないのですが,それでもこの巨大さは一度訪問してみる価値があると思います。

 また,東京地裁は日本の中心的なイメージがあるからなのか,東京地裁正面入り口付近に,特定の裁判官や訴訟指揮を批判し,あるいは結論について不当裁判であると批判する幟や垂れ幕が多数掛けられているのですが,これもほかの裁判所ではほとんど見たことがありませんので一瞥の価値はあるのかもしれません。  

2 大阪地方(高等)裁判所

 当職の本拠としている裁判所ですのでここで挙げたのですが,残念ながら率直なところ特に見どころがあるという裁判所(あくまで「建物」としてです)ではありません。

 裁判所としてはかなり大きな方であるとは思いますが上記東京地裁とは比べるべくもありませんし,福岡地裁のように近年新庁舎が建てられた裁判所と比べればどうしてもスケールでは劣ってしまいます。

 ただ,大阪地裁は正面入り口を出たすぐのところが「大川」という川沿いであり,DREAMS COME TRUEがサポートした「中之島 LOVE CENTRAL」というレストラン・カフェ・ウエディングや中央公会堂があり,観光名所と隣接しているという点では訪れてみても面白いかもしれません。

3 京都家庭裁判所

 京都家庭裁判所は下賀茂神社の旧境内内にあり,敷地内を御手洗川が流れているという裁判所です。

 この京都家庭裁判所ですが,単に敷地内を御手洗川が流れているというのではなく,御手洗川の上を渡る形で建物が建てられているというのがなかなか面白いところです。

 建物それ自体は特別歴史的な(あるいはデザイン的な)面白さがあるというわけではありませんが,「川の上に建物がある」というのは,それ自体で「落水荘」のような面白さ・美しさがありますので,一見の価値はあるものと思います。

 なお,京都家裁の近くには豆餅で有名な「出町ふたば」がありますのでお立ち寄りになられてもよいかもしれません。

 

4 神戸地方裁判所

 神戸地方裁判所は建物,敷地などにおいて,非常に荘厳で歴史を感じさせるものとなっています。

 特に増築されたと思われる上層階と,レンガ作りの1・2階部分の調和も美しく,敷地内に立ち入る際の門扉も歴史を感じさせる荘厳なものとなっています。

 建物内も外観の期待を裏切るものではなく,ドラマなどで裁判所として使用されている建物(過去には大阪府庁舎なども撮影に使われたことがあると聞いたことがありますが)と比べても引けを取りません。

 ぜひ,一度見に行かれることをお勧めしたい裁判所の建物といえます。

 

5 (旧)福岡地方裁判所

 平成30年8月に移転した福岡地方裁判所ですが,移転前の旧庁舎は福岡城跡敷地内にあるという点で,やや異例の裁判所であったと思います。

 以前,「お城と裁判所」でも書かせていただきましたが,裁判所(特に地方裁判所の本庁)の近くにはお城があることが非常に多いのですが,それは基本的には「隣接している」あるいは「付近にある」というものです。※2

 ですが,旧福岡地方裁判所庁舎は福岡城跡内にあり,建物に入るためにはいわゆる「お堀」を渡って入る必要があるものでした。

 このような位置関係ですので,福岡地裁に行くときは,何か「江戸時代のお白州に向かっている」ような,そんな気持ちがフッとする,ちょっと不思議な裁判所でした。

6 広島地方(高等)裁判所

 広島地方裁判所は,建物としては特筆すべきものがあるというわけではないのですが,裁判所内に「明治期などの裁判についての資料館」のようなスペースがあるのが特徴です。

 明治期・大正期の裁判においては,弁護士も検事も法服を着て入廷しなくてはいけなかった(今は法服を着用しているのは裁判官と裁判所書記官だけです)のですが,その時に用いられていた法服が展示されていたりと,なかなかに面白いコーナーです。

 なお,この法服。今のものとは異なり,まるでラストエンペラーなどのような中国ドラマ,映画に出てくる衣装のようなデザインで,これもまた面白いものであるといえます。

7 奈良地方裁判所

 奈良地方裁判所は何といっても「鹿」です。

 グーグルマップなどのストリートビューで見ていただいてもわかるのですが,敷地内に多数の鹿が,ごく普通に立ち入ってはのんびりと寛いだり,草を食んだりしています。

 奈良公園に隣接(あるいは入り口部分にある)しているためであるとは思いますが,迷い鹿が1頭2頭いるというようなものではなく,奈良公園と同じレベルでごく普通に多数の鹿が裁判所の敷地内でくつろいでいる姿は,「奈良独自の何か」を感じざるを得ないものです。

 こちらも必見の光景であると思います。

 以上,「建物」として観光してみてみる価値があると思われる裁判所を少しだけ挙げてみました。

 「建物」としての裁判所に興味をお持ちになっていただけたなら,一度観光のついでに立ち寄っていただいてもよいかもしれません。

〈弁護士 溝上宏司〉

※1 私が事件で出向いた時点のものですので,現在では変わっている可能性もあります。

※2 東京地裁・京都地裁・和歌山地裁・広島地裁・徳島地裁その他多数の地裁がこのようなものです。

© 弁護士法人橋下綜合法律事務所