2026/07/28 新着情報
職場のパワハラ問題に悩む企業へ|正しい社内対応と弁護士に相談するメリットを解説
1. はじめに(企業が抱えるハラスメントの悩み)
社内のハラスメント問題に頭を悩ませている経営者や人事担当者の方は少なくありません。
一口に「ハラスメント」と言っても、パワハラ(パワーハラスメント)、セクハラ(セクシュアルハラスメント)、マタハラ(マタニティハラスメント)、アカハラ(アカデミックハラスメント)、パタハラ(パタニティハラスメント)など、その種類は多岐にわたります。
従業員から「上司からハラスメントを受けている」と相談があった際、適切な社内対応を行わなければ、職場環境が悪化するだけでなく、企業としての法的責任を問われるリスクが生じます。
今回は、数あるハラスメントの中でも特に企業からの相談が多い「パワハラ(パワーハラスメント)」にスポットを当て、企業が講じるべき正しい社内対応や法律上の注意点について、会社側の視点から弁護士が分かりやすく解説します。
【結論】企業がパワハラ発生時に優先して行うべき3つの対応
社内でパワハラが発生した、またはその疑いがある場合、企業は迅速かつ慎重に以下の対応を進める必要があります。
- 事実関係の客観的な調査(当事者や第三者からの聞き取り・証拠収集)
- 被害者への配慮措置と加害者への適切な処分(配置転換や是正指導)
- 再発防止策の策定と全社的な周知(研修の実施や相談窓口の明確化)
自己判断で放置したり、不用意な処分を行ったりすると、後々大きな労働トラブルへ発展する恐れがあります。
2. 法律上のパワハラの定義と企業が負う責任
パワハラ問題に対処するにあたり、まずは法律上で「何がパワハラに該当するのか」を正確に理解しておくことが不可欠です。
(1)パワハラの3つの要素
法律上、職場におけるパワーハラスメントとは、以下の3つの要素をすべて満たすものと定義されています。
- 職場において優越的な関係を背景とした言動であること
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること
- 労働者の就業環境が害されること
単に指示が厳しいというだけではパワハラにあたらないケースもあり、「業務上の必要性」とのバランスを個別に判断する必要があります。
(2)パワハラの典型的な6つの類型
厚生労働省の指針では、パワハラの代表的な例として以下の6つの類型(Ⓐ〜Ⓕ)が挙げられています。
- Ⓐ 身体的な攻撃:暴行・傷害など
- Ⓑ 精神的な攻撃:脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言など
- Ⓒ 人間関係からの切り離し:隔離・仲間外し・無視など
- Ⓓ 過小な要求:業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
- Ⓔ 過大な要求:業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害
- Ⓕ 個の侵害:私的なことに過度に立ち入ること
※なお、これらの類型に直接該当しない行為であっても、前述「パワハラの3要素」を満たせばパワハラと認定される可能性は十分にあります。
(3)該当性の判断が難しい理由
上記のうち、Ⓐ〜Ⓒ(身体的・精神的攻撃、人間関係からの切り離し)については、通常業務に必要な行為とは言えないため、基本的には「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」としてパワハラと認められやすいと言えます。
一方で、Ⓓ〜Ⓕ(過小・過大な要求、個の侵害)に関しては判断が非常に複雑です。例えば「仕事熱心な上司による厳しい業務指導」の範囲内にとどまるのか、それを超えてパワハラに該当するのかの線引きは容易ではありません。
さらに、行為者の立場が「優越的な関係」と言えるか、労働者の「就業環境が害された」と客観的に言えるかといった要素を総合的に考慮して判断する必要があるため、専門知識を持たない社内関係者だけで正確に判断するのは困難です。
(4)パワハラ発生時に企業が問われる責任
社内でパワハラが発生した場合、加害者本人が責任を負うのはもちろんですが、使用者である企業側も大きな責任を問われる可能性があります。
- 民事上の責任(使用者責任など)
被害者から損害賠償請求を受けた場合、会社も使用者責任(民法715条)などを問われ、賠償金の支払いを命じられることがあります。 - 法令上の防止措置義務・措置違反責任
労働施策推進法第30条の2および厚生労働省の「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して 雇用管理上講ずべき措置等についての指針」 に基づき、事業主にはパワハラ防止や相談窓口の設置、事後対応などの措置を講じることが義務付けられています。この義務を怠った場合、企業としての対応不備を追及されるリスクがあります。
3. 実際のパワハラ相談事例と社内対応の具体例
ここでは、企業内で起こりやすいパワハラ相談の具体例と、対応を誤った場合のリスクについて見ていきましょう。
事例1:上司からの過度な叱責(精神的な攻撃)
- 状況:営業会議の場で、成績の上がらない部下に対して「やる気がないなら辞めろ」「頭がおかしいんじゃないか」と連日大声で怒鳴りつけた。
- 対応のポイント:業務上の指導・注意自体は必要ですが、人格を否定するような暴言や不特定多数の前での苛烈な叱責は「業務上必要かつ相当な範囲」を超えており、パワハラにあたる可能性が極めて高いです。
事例2:能力に合わない雑用のみを命じる(過小な要求)
- 状況:ベテラン社員と折り合いが悪くなった管理職が、その社員から主要な業務をすべて取り上げ、終日シュレッダー係や単純な雑用だけを命じた。
- 対応のポイント:業務上の合理的な理由なく、経験やスキルに見合わない低度の作業を強要することもパワハラ(過小な要求)に該当します。
※対応を誤った際のリスク
被害者からの相談を受けながら「当事者同士で話し合って解決してほしい」と放置したり、十分な事実調査をせずに加害者とされる社員を即座に懲戒解雇したりすることは避けなければなりません。調査不十分なまま下した処分は「懲戒処分の無効」として労働審判や裁判で覆されるリスクがあります。
4. パワハラ対応を弁護士に相談するメリット
パワハラ問題の初期段階から弁護士へご相談いただくことで、企業側には以下のような大きなメリットがあります。
- パワハラ該当性の正確なリーガルチェック
個別の事案が法律上のパワハラにあたるかどうかを、過去の裁判例や法的な基準に照らして客観的に判断できます。 - 正当な調査手続と証拠整理のサポート
ヒアリングの進め方や事実確認書・報告書の作成など、後から「手続きが不当だった」と訴えられないための万全な体制を整えられます。 - 適切な処分・指導のアドバイス
加害者に対する懲戒処分や是正指導、被害者への配慮措置(配置転換等)について、法的に妥当なラインをアドバイスします。 - 労働審判や訴訟への迅速な対応
万が一、被害者や加害者との間で法的トラブル(労働審判・訴訟)へ発展した場合でも、会社側の代理人として迅速に対応が可能です。
企業側の立ち位置を考慮し、事業活動への悪影響を最小限に抑えるための総合的なソリューションをご提供します。
5. 当事務所へのご相談・お問い合わせ
当事務所では、企業側の労働問題に関するご相談を多数承っております。
社内でのパワハラ・ハラスメント問題への対応はもちろん、問題社員対応、就業規則の改定、労働審判・訴訟への対応まで、会社を守る立場から迅速かつ手厚くサポートいたします。
法務体制を強化したい、社内のハラスメント対応等でお悩みの経営者様・人事ご担当者様は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
<弁護士 山中智生>

