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2026/10/28 新着情報

従業員がSNSに会社の悪口・機密情報を投稿した!会社が取るべき法的対応|会社側弁護士が解説

「従業員がX(旧Twitter)やInstagramで会社の愚痴や悪口、又は機密情報を書いているのを見つけてしまった」 「今すぐ懲戒解雇にして辞めさせたいが、法的に問題はないだろうか」

従業員によるSNS上の不適切な投稿に頭を抱える経営者や人事担当者は年々増えています。会社の悪評が拡散されれば、企業の社会的信用や採用活動、売上にまで深刻なダメージが及びかねません。

しかし、不適切な投稿をしたからといって、いきなり重い懲戒解雇などの処分を下すのは極めて危険です。対応の手順を誤ると、後から「不当解雇」や「懲戒権の濫用」として訴えられ、会社側が多額の解決金を支払う事態にもなりかねません。

この記事では、従業員がSNSに会社の悪口を書き込んだ場合について、初動の証拠保全から懲戒処分の選び方、法的措置までを会社側弁護士が分かりやすく解説します。

 

【結論】証拠を集め、現状を把握する

従業員のSNS投稿が発覚した場合、まずは次の3点を確実に押さえて対処する必要があります。

  • 投稿を削除される前に、客観的な証拠を確実に確保する(投稿画面の保存・投稿アカウントの詳細保存等)
  • 就業規則を確認し、適切な処分を検討する(いきなり重い懲戒処分を行わない)
  • 会社が被った損害や態様に応じて損害賠償・刑事告訴を検討する

 

従業員のSNS投稿に関する法律上の基本ルール

「会社の悪口を書いたのだから、すぐにクビにできるはずだ」と考えがちですが、日本の法律では解雇や懲戒処分に対して厳格な制限が設けられています。

 

1. 懲戒処分(労働契約法第15条)

会社が従業員に懲戒処分を下すには、あらかじめ就業規則に「どのような行為に対して、どのような処分を行うか」が明確に定められている必要があります。

さらに、処分内容が「客観的に合理的な理由」を欠く、又は「社会通念上相当」と認められない場合は、権利の濫用として無効になります(労働契約法15条)。単なる社内の愚痴程度で懲戒解雇などの重い処分を下すことは認められません。

 

2. 業務時間外・個人アカウントでの投稿

原則として、従業員がプライベート(私生活)で行う発言やSNS投稿は、会社の指示・命令が及ぶ範囲外です。そのため、基本的には会社が口を出したり処分したりすることはできません。

ただし、それが、会社の円滑な運営に支障をきたすおそれがあるなど企業秩序に関係を有する場合は懲戒処分の対象となり得ます。

 

3. 民事・刑事上の法的責任

従業員が虚偽の事実や具体的事実を並べて会社の信用を失墜させた場合、民事上の不法行為(損害賠償責任)にとどまらず、刑法上の名誉毀損罪や信用毀損罪・偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。

 

※この他にも投稿内容が公益通報に該当するか等その他法律上の検討事項が存在します。

懲戒処分が認められるケース・認められにくいケース

例えば会社が従業員の投稿を理由に懲戒処分を検討する場合、具体的にどのような投稿であれば懲戒処分が認められやすいのか、いくつか例を整理します。

※以下の記載はあくまで投稿内容にのみ着目した場合の評価となります。実際にはその他企業秩序に与える影響、会社の管理体制等の事情も考慮し、懲戒処分の有効性を判断します。

 

懲戒処分が認めらやすいケース

  • 機密情報・個人情報の漏洩
    「〇〇社の担当者とこんな揉め事があった」「新製品の発売前の画像を載せる」など、会社の営業秘密や個人情報を公開した場合。
  • 虚偽の事実による重大な中傷
    「うちの会社は給与を一切払わないブラック企業」「産地偽装をしている」など、事実無根の悪質なデマを投稿・拡散させた場合。
  • 取引先や顧客に対する中傷・嫌がらせ
    来店客や取引先を特定できる形で嘲笑・批判し、企業への信頼を直接損ねた場合。

 

懲戒処分・法的責任が認められにくいケース

  • 単なる主観的な愚痴・軽微な不満
    「今日も残業で疲れた」「上司の指示が分かりにくい」程度の抽象的な不満。
  • 内部告発
    会社内部の違法行為(深刻な労働法違反や不正会計など)を外部に開示する投稿。

詳しくは別途公益通報に関する記事にて説明します。

 

ただし注意すべきなのは、「懲戒処分」が認められるケースであっても、いかなる懲戒処分でも有効というわけではなく、上述した通り、従業員の行為に見合った懲戒処分を下さなければならないことです。

 

従業員のSNS悪口への「初動対応」3ステップ

トラブルが発覚した際は、次の順番で冷静に動く必要があります。

1. 画面の保存(証拠保全)
まずは何よりも証拠の確保です。本人に問いただす前に、以下の情報をスクリーンショットや印刷で残します。
・投稿日時、投稿内容
・アカウント名、アカウントID(URL)
・閲覧数、リポスト(リツイート)数、いいね数、拡散状況
・会社名や上司・同僚の個人名が特定できる記述があるか
後から「投稿を削除した・していない」「誰が見たか」で争いになるのを防ぐため、拡散規模も含めて保存することが重要です。
2. 投稿者の特定(匿名の場合)
アカウントが匿名で社員かどうか確証が持てない場合、社内調査による特定以外にも、弁護士を通じて裁判所に「発信者情報開示請求」を行い、法的な手続きに則って投稿者を特定するといった手段も考えられます。
3. 就業規則の確認
懲戒処分を行う大前提として、「会社の就業規則に、今回の行為が懲戒事由として明確に定められているか」「その就業規則が従業員にしっかり周知されていたか」が必須です。規定がない場合、後から勝手に懲戒処分を下すことはできません。

弁護士に相談するメリット

SNSの労務トラブルは、初動の判断ミスが致命的なリスクにつながります。弁護士にご相談いただくことで、以下のサポートが可能です。

  • 処分の妥当性判断: 裁判になった場合に耐えうる処分レベル(戒告、減給、懲戒解雇など)を的確に見極めます
  • 適正な手続きの進行: 本人への弁明の機会付与など、就業規則に沿った不備のない手続きを整えます
  • 法的手続きの代行: 発信者情報開示請求、削除要請、損害賠償請求などを迅速に進めます
  • 再発防止策の策定: SNS利用ガイドラインの作成や就業規則の改定を支援し、将来の炎上リスクを根本から防ぎます

 

企業側の労働問題・SNSトラブルのご相談は当事務所へ

当事務所では、企業側の労働問題やトラブル対応を数多く取り扱っております。

トラブルが発生した後の事後対応はもちろん、SNSガイドラインの策定や就業規則の改定といった「トラブルを未然に防ぐ予防法務」を含め、企業法務の観点から継続的にサポートいたします。

従業員の不適切な投稿への対応に苦慮されている企業様、再発防止体制を整えたい企業様は、どうぞお気軽にご相談ください。

 

<弁護士 山中智生>

© 弁護士法人橋下綜合法律事務所