弁護士雑感

2022/09/28 弁護士雑感

【弁護士雑感】電動キックボードについての続きのお話

 以前、電動キックボードやフル電動自転車について当ブログで取り上げさせていただいたことがあります。

 その後、法整備や法改正などが行われ、社会としては電動キックボード(ニュースなどではキックボードにフォーカスされることが多いですが、同様の論理で恐らくはフル電動自転車も)を従来の枠組みによる「原動機付自転車」としてではなく、特定小型原付として、免許が不要であったり、ヘルメットの着用も任意であったり、速度制限によっては歩道の走行すら可能となるなど、どちらかと言えば従来の自転車と類似した運用へと進もうとしています。

 今日はこのことに関して少し気になったことについて、改めてお話をしようと思います。

1 電動キックボードやフル電動自転車について、法改正や整備が進められ、上記のように緩やかに解禁される方向であることは間違いが無いことではありますが、令和4年9月現在においては未だ法改正は可決こそされたものの施行はされていません。

 そのため、現時点においてはやはり電動キックボードやフル電動自転車は従来の枠組みにおける「原動機付自転車」として取り扱われるものであって、安易に公道で用いることは様々な違反や違法行為を行ってしまっているということになります。

2 しかしながら、ニュースのような報道番組だけではなく、ワイドショーや情報バラエティ番組などでも「電動キックボード解禁に向けた動き」が紹介され、さらには実証実験エリアにおいて認可を受けた事業者からシェアされた電動キックボードなどは同エリア内においてはヘルメットの着用義務もなくかなり自由に公道を走行することができることもあって、一般の方において電動キックボードを公道で用いることに対する心理的ハードルや抵抗感がかなり低くなっているように見受けられます。

 特に、弊所の所在地近辺は「大阪キタ(梅田)」エリアであり電動キックボードの実証実験エリア内にあります。

 そのため、もちろん適法な電動キックボードを見かけることも多いのですが、それと比例するように、明らかに認可を受けていない電動キックボードやフル電動自転車(これらはウインカーやナンバープレートなどの必要な装備を備えていないので一目瞭然です)を見かける機会も急増しています。

3 今後、電動キックボードの実証実験エリアが拡大されたり、あるいは改正法の施行がなされるなどして実際に電動キックボードが全国で用いられるようになれば、おそらく「適法な装備を備えていない違法な電動キックボードやフル電動自転車」の数も急増することが予想されます。

 以前も書いた通り、電動キックボードやフル電動自転車は非常に便利な道具になり得るものではありますが、他方においてきっちりと法律に則った用い方をしなければ取り返しのつかない事故を起こしかねず、それは法的に見て被害者・加害者双方の人生を決定的に破壊しかねない危険なものになってしまいます。

 電動キックボードが社会に受け入れられる方向で進んいる今だからこそ、改めてその取扱いについて、社会全体で認識を改めた方がよいのではないかと危惧しております。

〈弁護士 溝上宏司〉

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