弁護士雑感

2022/10/18 弁護士雑感

【弁護士雑感】育児・介護休業法の改正について

 育児・介護休業法が改正され、出生時育児休業制度(厚生労働省のサイトでは「産後パパ育休」と呼称されています。)という新たな制度が創設され、本月から施行されています。

 この制度の創設に伴い、これまで以上に、男性は育児休業の取得がしやすくなり、それに伴い、使用者(事業主)の方でもしっかりとした労務管理の準備をしていないと、法的紛争に発展する可能性があります。

 そのため今回は、育児・介護休業法の改正について、少し書いてみたいと思います。

 これまで女性の場合、子の出生後8週間は産後休業を取ることができ、その後、育児休業を取得することができましたが、男性の場合、子の出生日から8週間以内であれば取得日数に制限を設けないパパ休暇(本年9月末に廃止)という制度は定められていましたが、こちらのパパ休暇については一度職場復帰してしまうと再度取得することができませんでした。

 そのため、制度として使い勝手が悪いとの要望に応える形で、出生時育児休業制度が創設され、子の出生後8週間以内の内、4週間の育児休業をとることでき、さらにそれらを2回に分割して取ることができるようになりました(育児休業についても、改正前の育児休業は、原則として分割取得はできませんでしたが、改正後は、子どもが1歳になるまでの間、2回に分割して取得できるようになっています。)。

 また、育児・介護休業法改正により、今年の4月1日から「妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に個別の周知・意向確認措置」が義務化されました。これにより、使用者(事業主)は、従業員から妊娠・出産の報告を受けた場合、会社の育児休業などの制度をしっかりと説明し、当該従業員に対して当該制度を利用するかどうかについての意向を確認しなければならなくなっています。

 なお、男女雇用機会均等法において、「事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、その他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。」(第9条第3項)と定められ、育児・介護休業法においても「事業主は、労働者が育児休業の申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。」(第10条)と定められており、妊娠・出産の申し出をしたこと、産後パパ育休の申し出・取得をしたこと、産後パパ育休期間中に就業するように促したり、就業することに同意しなかったこと等を理由に不利益な取り扱いをすることも禁止されています(加えて、使用者(事業主)には、上司や同僚からのハラスメントを防止する措置を講じることも義務付けられています。)。

 

 本改正により、使用者(事業主)は、育児休業と同様、労働者が産後パパ育休を取得できるように事前に制度を導入し、就業規則等の社内規程の整備をすることが義務付けられます。

 従業員数の少ない企業では、なかなかそこまで手が回らないのが実情としてあるかと思いますが、制度の不備が発覚してからでは、より手間暇を取られることは間違いありません。

 毎年、多くの法改正が行われていますので、御自身と関係のある法改正はないのか、常日頃から意識して頂ければと思います。

                              〈弁護士 松隈貴史〉

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