2020/07/03 弁護士雑感
【弁護士雑感】警察署における「接見」について
先日、桶田淳也被告人に対する第一審の判決が出されたとのニュースを目にしました。
これは、2年ほど前に世間をにぎわせた「大阪府警富田林警察署から、勾留中に逃走をした事件」であるといえば、覚えておられる方も多いことと思います。
このような、被疑者被告人による勾留中の逃走についてはその責任の所在について当該警察署及び警察官、直前に接見を行っていた弁護人など、様々な関係者の責任を問う声もありましたが、今回はその点ではなく、この事件を機に、警察署での接見についてどのようなシステムの変更などがあったのかをお話したいと思います。
1 まず、本件以前、我々弁護士が接見にいくと、ほとんどの警察署では受付で「接見に来た」旨を告げると、そのまま「留置管理課へ行ってください」と告げられて、後はフリーで留置管理課へと行っていました。
その後、接見の申込書のようなものを書くのですが、それは留置管理課で書くということがほとんどでした。
しかし、本件以後は、多くの警察署でまず受付で接見の申込書を書くことが多くなり、その後留置管理課へという際にも、受付にいる警察官が付き添って連れて行ってくれるようになりました。
連れて行ってくれるといえば聞こえはよいのですが、管理が強化されているということでもあるので、何となく重い気持ちになることも否定はできません。
2 次に、最大の違いとして、本件以前は接見室への出入りは自由でしたので、弁護人は接見終了後自由に退出することが出来ましたが、本件後は少し手順が変わりました。
具体的には、接見室に電子錠がかかるようになり、電子錠の開錠キー自体は弁護人に渡されて、それを使って室内から開錠できるのですが、その際に電子キーと連動してアラームが鳴るようになり、必ず警察官が開錠時に弁護人を迎えに来るようになりました。
また、それに伴い、以前は接見開始後は留置管理課に誰もいなくなることも多かったのですが、必ず接見終了時まで警察官が待機しているようになりました。
そのため以前であれば接見終了時に警察官を探して接見終了を告げたりしなければならならず、時々警察が忙しい時などには接見開始時に「終わったらそのまま帰ってください」などと言われることもあったものが、必ず待っていてくれるのでこの点については面倒がなく、スムーズになったともいえます。
この点については、おそらく富田林の逃走事件の最大の原因ですので、ここの改善には費用や人員を手厚く配備したのだなあという印象を受けます。
3 その他、以前は接見終了時になかなか被疑者被告人を迎えに来ないことも時々あったものが、今は接見が終了した旨を告げると非常に迅速に被疑者被告人を迎えに来るようになりました。
これも、無意味な時間の空白を作らないようにという、再発防止のための心がけなのだと思います。
4 当職としては本件は、警察の勾留に関する管理システムのゆるみと、それをそのまま受け入れていた弁護人の慣れ、さらに警察と弁護人のコミュニケーション不足により生じた事件であったと考えています。
弁護人の責務は被疑者被告人の正当な利益の保護であり、決して被疑者被告人を追求し、刑罰を科すことを助長することはあってはなりません。
また、時として納得しがたい勾留や接見禁止、保釈の不許可など、俗に「人質司法」と称されるような、不当な身柄拘束が存在していることも事実であると考えています。
しかしながら、これらについては適法な手段で被疑者被告人の権利義務を守るべく最大限の活動を行うべきであって、万が一にも本件のような事件を再発させることはあってはなりません。
我々弁護人としても、このような観点から十分に注意した行動をとらなければならないものといえるでしょう。
〈弁護士 溝上 宏司〉