弁護士雑感

2019/10/31 弁護士雑感

【弁護士雑感】詐欺メールについて

インターネットや携帯電話などのメール機能の普及に伴って、いわゆる詐欺メールの類が社会問題となって久しいものですが、令和の時代になった今でも、このような詐欺メールは後を絶ちません。

実際当職のメールアドレスにも「外科医・○○」「園長・△△」などといったあたかも資産家の妙齢の女性を思わせる名称や、「国際支援統括機関」などという名称の送信元から、1億9000万円や15億8900万円を贈呈したいなどという、もはや「詐欺」というよりも一見してわかる「冗談」ではないかと思われるような詐欺メールが届いています(もちろん即座に「迷惑メールフォルダ」行きです)。

また、少し前ではある種のメールサービスに対して、使用しているパスワードなどを示したうえであたかも個人情報が漏洩し、特定のアカウントなどを乗っ取ったかのようなメールを送信しては、被害を受けたくなければビットコインなどの仮想通貨で相当額の支払いを求めるという、もはや恐喝の域に達しているようなものも流行っていたようですし、このブログ記事を作成している直近では、AMAZONや大手銀行などの実在の機関の名を騙った詐欺メールも舞い込むことがあります。

このような詐欺メールについては、日々新しい手口や文面等が生まれているようで、これに騙され、あるいは不安を覚えておられる方も多いものと思いますので、以下ではひとまず行うべき対応というものについてお話をしたいと思います。

1 まず、原則としてそのような請求メールは「無視すること」が一番です。

 上記の詐欺メールにいろいろと個人情報めいたことが書かれているかもしれませんし、場合によっては個人情報を周囲に触れ回る、自宅に押し掛ける、職場に出向くなどと書いてあるかもしれませんが、そのような詐欺メールの発信者が、本当に受信者の個人情報を取得している可能性はほぼゼロです。

 ですので、気にせずに無視してしまって構わないということになります。

  

2 とはいえ、詐欺メールにはパスワードやネットワークIDなどが記載されていることもあり(とはいえ、これらはどこかから漏洩したものではあるものの、それ以上の個人を特定するに足りる情報まで漏洩していることはほとんどありません)、本当に個人情報が洩れているのではないかと不安に思う方もいるでしょう。

そのような場合には、インターネットで検索をしてください。

 メールを受け取っているということは、すでにネット環境はあるものと思いますので、①上記の請求メールのタイトル②本文の一部をコピー&ペーストしたうえで、Yahoo!やGoogleなどで検索にかけてください。

 このような行動をとっていただければ、同詐欺メールの最初期の被害者でない限り、どこかの誰かが「こんな詐欺メールが届いた」などというように、同メールは詐欺である旨を周知してくれているはずであり、それを見れば同メールが単なる「詐欺」であることがわかり、安心できるものといえるでしょう。

3 それでも不安な方は、上記メールのタイトルや本文の一部と一緒に、各都道府県の警察を検索してください。

 詐欺メールが流行りだしてから少し経った頃であれば、警察のHPで注意喚起をしてくれていることも多く、これを見ればさらに安心することが出来るでしょう。

 また、実際に警察署に出向いて相談をしてみるということもよいでしょう。

4 まだまだ不安が拭えないという方や、詐欺メールについてこれを他人に見せて相談することは何か恥ずかしいとか後ろめたい(詐欺メールには上記の通り脅迫めいた内容がありますので、他人に知られたくないと思う方もおられるかと思います)と思う方は、そのような詐欺メールをもって、市役所や弁護士会などの無料法律相談を受けてみてください。

 おそらく担当弁護士が「このような詐欺メールは無視するに限る」という趣旨の話をしてくれるかと思いますし、その理由(例えば一見すると裁判所からの連絡であるかのように見えるので不安に思っているような場合、裁判所からこのようなメールが来ることはあり得ないなどの手続き的な話)の説明を受けることもできるかと思います。

 また、たとえ無料相談であったとしても、法律相談に応じた弁護士には当然「守秘義務」がありますので、当該弁護士が市役所の職員なども含めて、第三者に法律相談の内容を漏らすということはありませんので、この点についても安心していただいてよいものと思います。

5 このような詐欺メールは、個人のプライバシーが漏洩されるかのような不安感を与え、その不安感に乗じて金員を詐取するというものであり、もはや詐欺ではなく脅迫・恐喝であって、到底許すことのできるものではありませんが、高度にネット化が進み、だれもがスマートホンなどを所有している現代においては、これを完全に禁圧することは不可能であるとも言えます。

 せめて、このような詐欺メールが「本当は何もプライバシー情報などを握っておらず、漏洩の恐れなどはない」ということについて皆さんに正しい知識をお持ちいただき、だまされることの内容にしていただければと思います。

〈弁護士 溝上宏司〉

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