2019/03/05 弁護士雑感
【弁護士雑感】松井大阪府知事と米山元新潟県知事の裁判について
平成31年2月21日、大阪高等裁判所にて、私が代理人として活動させて頂いた松井大阪府知事(以下、「松井知事」といいます。)と米山元新潟県知事(以下、「米山氏」といいます。)の裁判があり、無事に和解にて終了致しましたので、本日はその事について書かせて頂こうと思います。
事の発端は、米山氏が、ツイッター上に、「因みにこの『高校』は大阪府立高校であり、その責任者は三浦さんの好きな維新の松井さんであり、異論を出したものを叩きつぶし党への恭順を誓わせてその従順さに満足するという眼前の光景と随分似ていて、それが伝染している様にも見えるのですが、その辺全部スルー若しくはOKというのが興味深いです」と投稿し、松井知事から、「私自身がこの様なことをしてきたと一般の方に印象を持たれるツイートを、現職の新潟県知事がすることは許されないと思う。」との御相談があり、当事務所としても、上記ツイートは行き過ぎた表現行為であると考え、米山氏に対して、名誉毀損を原因とする不法行為に基づく損害賠償請求の訴えを大阪地方裁判所に提起致しました。
第一審では、こちらの主張が認められ、米山氏に対して、「33万円を支払え。」との判決が示され、それに対して、米山氏側は一審判決を不服として、控訴しました。
米山氏から控訴がなされた旨を松井知事にお伝えしたところ、松井知事からは、「もう米山氏は現職の知事ではないので、これ以上、争いを続ける理由はこちらにはない。自身の考えが正しかったことを一審の裁判所が認めてくれただけで十分。これを機に和解をできるように進めて欲しい。米山氏が謝罪まではしたくないというのであれば、特に和解条項に謝罪文言を入れて頂く必要もない。」との話があり、控訴審の第1回期日が行われるよりも前に、私から松井知事には和解の意向があることを大阪高等裁判所にお伝えしました。
松井知事のかかる意向を踏まえて、大阪高等裁判所からは和解案が示され、代理人間で微修正を重ねた結果、「今後はお互いに、誹謗中傷などの違法行為は一切しない。」ことを約束する形で無事に和解が成立しました。
本件は当事者が納得し、無事に和解が成立したわけですが、最近、様々な方のツイッターを見ていると、個人間におけるメールで済ませれば良いような内容なものについてまで、敢えてツイートという形を取っているものが数多く存在し、そこには他者への罵詈雑言が含まれているものも少なくありません。
例えば、メール等で特定の相手だけに、相手を誹謗中傷するような内容のものを送信したとしても、原則的に公然性の要件が欠けるため名誉毀損罪や侮辱罪が成立することはありませんが、ツイッター上など、誰もが見れる環境で、相手を誹謗中傷するような内容を公開すれば、名誉毀損罪や侮辱罪が成立する可能性があります。
本件については、大阪高等裁判所や最高裁判所がどの様な判断をしたかは知る由はありませんが、大阪地方裁判所の判断を通して、多くの人と瞬時に情報共有ができるツイッターは、利便性が認められる反面、名誉毀損等の罪が成立する危険性を秘めているということだけは今一度、皆様にも注意喚起を頂ければと思います。
〈弁護士 松隈貴史〉